● 《究極の選択》研究ライトユニット

ライトユニット長:大庭弘継(文学研究科・研究員)

連絡: ooba.hirotsugu.7x(a)kyoto-u.ac.jp

 

「犠牲が避けられないとき、何を選ぶべきか」という《究極の選択》を、我々のユニットは提示し議論する。タブー視されるが、この問題は様々な分野で生じており、もはや不可避でさえある。社会で議論するための呼び水として、本ユニットは《究極の選択》を、対面やWEBで議論し、よりマシな選択を探る。

 

ユニットメンバーが感じるユニットのおもしろみ

 

犠牲が避けられない難問が《究極の選択》の題材である。《究極の選択》は、安易な回答が困難である。それに加えてこれらは、当事者の全く関知しないところで決められてきた。

 

ジェノサイドへの対処やパンデミックのワクチンのように、当事者の生命が左右される問題も、一部の人々が決めてきた。また、これらの《究極の選択》は、直面する一部の人々だけが苦悩したうえで、責任を押し付けられてきた。端的に「人殺し」という罵りもある。

 

そもそも、こちらを立てればあちらが立たずという、二者択一的な状況が、社会的に認知されていない。一部の専門家だけに任せず、当事者も含めた意志決定のためには、社会的認知を高めたうえで、適切な意思決定を探る必要がある。

 

そこで、困難だが社会で判断するべき問題を《究極の選択》として事例化し、問題の普及に努め、さらに人々が選択できる機会を模索する。

 

ユニットの活動

 

 

本ユニットでの調査研究は、《究極の選択》という極限的事例に精緻化したうえで、それを広範な人々に議論し選択してもらう、の二段階で考えている。それによって、《究極の選択》の事例に実際に直面した際の意志決定をするうえでの「根拠」を、政治や社会に提供する。なお本ユニットで扱う《究極の選択》は、それぞれの専門分野で生じているが、その分野で回答を出せず、社会的合意を必要とする難問を対象とし、異分野の研究者からなる本ユニットで、個々の《究極の選択》の共通点と相違点を探ることで、根源的な要素を探究する。

 
現時点で作成を予定している事例は、すべての問題を網羅しているわけではない。偶然にも異分野の研究者が共通の問題構造に気が付き、その対処法・解決策を模索して始まったものだからであり、広げるためにも、まずは下記に取り組む。

 

 

・事例の提示:医療倫理、天文学、国際政治学で、選択肢はシンプルだが精緻な問題を提示する

 
具体的には、ルワンダ・ジェノサイドなどの虐殺による数十万人の犠牲を阻止するため、数万人を巻き添えにする軍事介入は許容されるかといった問題や、パンデミック発生後に不足するワクチン接種の優先順位の選択(その選択は同時に誰かを犠牲にすることを意味する)などを取り上げる。地球に衝突が予測される天体の軌道をそらすために、核兵器が有効であるとの主張があるが、核兵器は「非倫理的兵器」として忌避されている。将来の可能性のために、全世界で廃絶運動が行われている核兵器の維持を許容できるのか、という問いを提示する。

 

・選択と議論:作成した《究極の選択》を、複数の選択肢として、ホームページ(選択システム)と、一般の方も参加できるテレビ会議(ウェビナー)で、人々や研究者に選択してもらい意見を集める。

 

 自分の生死も関わる問題であり、切迫した問題であり、意志決定に関与できるとしたら、多くの人々は参加を望むだろう。本ユニットが提示するのは、参加し選択できる問いとして提示する。そのために、ウェビナーで質疑応答と議論そして選択してもらうとともに(YouTubeで録画し公開)、わかりやすく選択できるシステム(選択システム)をWEB上に構築し公開する。そのシステムは、問題設定の妥当性や選択した理由についての意見を書き込めるような仕組みとする。つまり、サイト訪問者が直感的に問題を理解するが、選択は躊躇するシステムを構築し、その選択と意見のデータを収集する。そこで収集した選択データや意見を、ユニット内で定期的に会合を開催して、分析考察する。またシンポジウムやワークショップその他アウトリーチでの議論も企画する。

 

 
こういった困難さに挑戦することで、本研究は、難問を議論する道筋を探究し、先鞭をつける。また、個々の問題の難解さをできるだけ噛み砕き、人々が選択できる状況にまで分解することや、タブー視される問題を取り扱う上での知見や検討事項も明らかにする。

 

 

 

 

 

アピールポイントや野望

 

・人類規模の問題に対処するための、意志決定の仕掛けの探究

 

・「人工知能にお任せ」にしないための、意志決定の知見の蓄積

 

・単純多数決でも熟議でもない、民主的意志決定の模索

 

・自然科学と人文・社会科学を横断する分野をまたがるオープンサイエンスの実践

 

・同じように難問を扱う研究や実務の取り組みの触発

 

 

構成員リスト(2019/07/01時点) 

順不同

学内メンバー

所属、役職等

プロジェクトでの役割

大庭弘継

京都大学・大学院文学研究科・研究員

代表者、全般担当

玉澤春史

京都大学・大学院文学研究科・研究員

副代表、宇宙科学の知見の応用

河村聡人

京都大学・大学院理学研究科付属天文台・博士後期課程

宇宙科学の知見の応用

佐藤恵子

京都大学・医学部附属病院医療安全管理部・特任准教授

生命科学の知見の応用

鈴木美香

京都大学・iPS細胞研究所上廣倫理研究部門・特定研究員

生命倫理学の知見の応用

高木裕貴

京都大学・大学院文学研究科・博士後期課程

応用倫理学の知見の応用

学外メンバー

 

 

一方井祐子

東京大学・カブリ数物連携宇宙研究機構・特任研究員

科学コミュニケーション論の知見の応用

大園誠

同志社大学・人文科学研究所・嘱託研究員

政治学の知見の応用

岡本慎平

広島大学・大学院文学研究科・助教

応用哲学の知見の応用

笠木雅史

名古屋大学教養教育院特任准教授

実験哲学の知見の応用

菊地乃依瑠

政策研究大学院大学・科学技術イノベーション政策研究センター・専門職

科学コミュニケーション論の知見の応用

小松志朗

山梨大学・生命環境学部・准教授

生命科学と政治学の知見の応用

中村長史

東京大学・教養学部附属教養教育高度化機構・特任助教

政治学の知見の応用

千知岩正継

北九州市立大学・外国語学部・非常勤講師

政治学の知見の応用

本田 康二郎

金沢医科大学・人間科学領域・准教授

応用哲学の知見の応用

森岡正博

早稲田大学・人間科学部・教授

応用哲学の知見の応用