学研究成果の受け取られ方を考えるライトユニット
Data
ライトユニット長
設楽成実(東南アジア地域研究研究所、助教)
連絡先
shitara@cseas.kyoto-u.ac.jp
About
「量的調査から質的調査へ」をキャッチフレーズに、大学が生み出す研究成果が発信された先で誰にどのように受け取られているかを検討する。異なる分野の研究者・実務者が「発行媒体」「発受信に関わる人々の関係」「発信者側へのフィードバック」の事例を持ち寄りそれぞれの立場から意見を出し合い、効果的な成果発信手法の提案を目指す。
Point
研究成果の発信、活動に関する情報発信が重要と言われるが、現状では「発信しっぱなし」の感が否めない。しかし、「発信」はただの入り口にすぎず、私たちは本来「発信」によって受け手との「コミュニケーション」を求めているのではなかったか?
そのような原点に立ち戻って、受け手や、受け手による研究成果や情報の利用の実態を私たちは知りたい。そこには、発信側が想定していなかった受け手の存在や利用、発信された情報が繋ぐコミュニティの発見もあると期待する。そして、こうした実態解明を通しよりよい発信=コミュニケーションにつなげたい。
そんな意欲をもつ学内外の多彩な媒介者(メディエータ)がこのライトユニットのメンバーに揃った。意欲、知識・経験、実行力、そして成果を持ち帰りそれぞれの持ち場ですぐに実践に移すことができる環境を兼ね備えたメンバーが揃っていることがユニットの魅力であり、最大の強みだ!
Activity
今日、大学は、ジャーナル、学術書、紀要などに加えて、データベース、デジタルアーカイブズ、ニューズレター、SNS等様々な媒体を通し、研究成果や研究活動に関する情報を日々精力的に発信し続けている。発信媒体は年々増え、発信技術も進歩し(動画、イラスト、グラフィックなど)、情報発信につぎ込まれるカネや労力もまた増え続けている。
効果的な発信やその支援体制を構築・改善してゆくには、各発信媒体の意義や社会的期待に基づいた議論をする必要があり、そのためには‘情報の受け手’側からの「質」的情報のフィードバックが不可欠である。例えば学術ジャーナルであれば、被引用数を始め、ダウンロード数、アクセス数といった「量」を把握し、それを分析・ランク付けする技術は近年めざましく進歩しているが、では、発信された情報は一体、(どこの国の)誰に届き、誰が読み、誰が使い、どのように活用されるのか? 読み手は、それを自らの価値観にどのように反映させているのか? 受け手同士が共有するコミュニケーションは生み出されているか? こうしたことを知る術は、現在、非常に限られている。
上記のような課題意識のもと、「量的調査から質的調査へ」をキャッチフレーズに、本ライトユニットを立ち上げる。本ユニットは、研究者、学内学術誌編集者、広報担当者、研究支援者、博物館や資料館のアーキビスト、さらに学外からは出版事業者が、それぞれの知見、経験事例、ノウハウを持ち寄り、意見を出し合いつつ議論・検討・分析するための場とする。そして、そこから得られる新たな知見を、成果発信体制の改善や取組みに反映することができるような提案の提出を目指す。
活動は下記の3ステップで進める。
Step1:研究成果、情報の発信媒体の整理
学内の発信媒体を「想定する受け手」「目的」「受け取りの時間軸」等の情報をもとにマトリックスとして整理し公開する。発信媒体の選択に迷う研究者や研究支援の実務者にとって役立つと期待する。
Step1:研究成果、情報の発信媒体の整理
学内の発信媒体を「想定する受け手」「目的」「受け取りの時間軸」等の情報をもとにマトリックスとして整理し公開する。発信媒体の選択に迷う研究者や研究支援の実務者にとって役立つと期待する。
Step2:研究成果、情報の受け手の分析
発信された情報が、誰に届き、どのように活用されているのか?議論の場の形成、世論の喚起にどのように寄与しているか?といった分析を各メンバーが業務上入手可能なデータを基に行う。ひとまずアクセスログ解析、入場者や読者カードの分析等を念頭に置いているが、確立された分析方法がないため、知恵を出し合い分析方法を考えるというところから始める。また、発信体制の変遷も追うことで未来的な発信体制の検討につなげる。
Step3:Step2により入手した質的評価(評判)を研究者に還元
Step2による分析結果を基に、各発信媒体、発信業務を担うメディエーターの意義をまとめ、研究者に還元する。併せて、学内の情報発信にかかる支援体制を再考し、より意義のある支援の在り方を提案する。
Mission
社会が大学に向ける目には、人文社会学系学部の不要論にみられるように、厳しさや懐疑心が増しているように感じますが、本活動を通し「大学=社会の精神価値、社会の枠組みをつくるもの」という大学の持つ社会的役割の再確認へとつなげたいと目論んでいます。
Member
氏名 | 所属 | 役職等 | プロジェクトでの役割 |
---|---|---|---|
学内メンバー | |||
設楽成実 | 東南アジア地域研究研究所 | 助教 | ユニット代表、学術誌・学術書編集者の立場から情報提供(特に紀要誌の動向) |
齋藤歩 | 総合博物館 | 特定助教 | 博物館アーキビストの立場・経験から情報提供 |
佐伯かおる | 防災研究所 | 特定職員 | 個別部局の広報を担当する職員の立場から情報提供 |
清水智樹 | 国際広報室 | 特定職員 | 大学の国際広報を担当する職員の立場から情報提供 |
川口朋子 | 大学文書館 | 特定助教 | 自治体アーカイブズでの勤務経験や、大学との違いなどの点について情報提供。大学の発信媒体の変遷を調査 |
天野絵里子 | 学術研究支援室 | URA | URAとして、また元図書館職員としての立場から情報提供。研究成果、情報発信にかかる支援制度の情報提供 |
神谷俊郎 | 学術研究支援室 | URA | 東南地域研担当URAとして、本ユニット運営を補佐。研究成果、情報発信にかかる支援制度の情報提供 |
井出和希 | iPS細胞研究所上廣倫理研究部門 | 特定助教 | 医薬系学術誌および査読・出版倫理に関する情報提供 |
学外メンバー | |||
鈴木哲也 | 京都大学学術出版会 | 専務理事・編集長 | 学術出版の編集長としての立場から情報提供 |
大橋裕和 | 京都大学学術出版会 | 編集者 | 学術出版の編集者としての立場から情報提供 |
亀田尭宙 | 国立歴史民俗博物館 | 特任助教 | 情報学者の立場・経験から情報提供、ネットワーク技術についてのアドバイス |