[心理学×教育学×医学×情報学×霊長類学]
こころの科学ユニット
Data
ユニット長 月浦 崇(人間・環境学研究科 教授)
WEBSITE(ユニットへのお問い合わせは下記サイトより)
https://www.kokoro-unit.kyoto-u.ac.jp/
関連部局
文学研究科、教育学研究科、医学研究科、人間・環境学研究科、情報学研究科、霊長類研究所、こころの未来研究センター、野生動物研究センター、総合生存学館、人文科学研究所、防災研究所、フィールド科学教育研究センター、高等研究院、学生総合支援センター、政策のための科学ユニット、国際高等教育院、オープンイノベーション機構
About
令和3年1月、京都大学に「こころの科学ユニット」が発足しました。本ユニットは、平成23年に発足した「心の先端研究ユニット」が10年間の設置期間終了を迎えたことにともない、心を科学的にとらえる研究や教育、産学連携活動を一層推進するために、令和3年1月「こころの科学ユニット」に名称を変更して再出発したユニットです。本ユニットは、心理学、認知科学、神経科学、情報科学をはじめ、いわゆる文理を超えた学際研究を日本から発信、推進することを目指しています。また、心理学関連の専門教育の充実も、本ユニットが担う大きな役割のひとつです。最新科学の知を現場に活かすことで、現代社会が抱える多様かつ複雑な心の問題の解決を目指します。企業や地方自治体等との連携を進めることで、社会に開かれた研究ユニットとしての活動を展開します。
本ユニット内には、心理学教育に関する部局間連携を推進する「京都大学心理学教官連絡会(通称PSI)」、国家資格である公認心理師資格取得のためのカリキュラム整備を行う「公認心理師WG」、産学連携事業を推進する「産学連携WG」、心理学研究の倫理審査を実施する「倫理審査委員会」が設置されています。なお、本ユニットの事務局は、こころの未来研究センターが担っています。
京都大学は、日本の心理学研究の中核を担ってきました。 1957年に創刊された「心理学評論」(心理学評論刊行会発行)や「Psychologia」(プシコロギア会発行)の国内・国際学術雑誌は現在も継続して発行され、日本の心理学の発展に大きく貢献してきました。また、本ユニットの構成員は、所属する部局を超え、数十年間にわたり月単位で会合を行ってきました。それは、本学心理学関連領域の教育・研究活動の密な連携体制の構築につながりました。『21世紀の心理学に向かって』(ナカニシヤ出版、2001年、2021年に改訂版発行予定)は、PSIを中心に発行されたテキストで、心理学を目指す次世代に最先端の基礎的知見を届けるために編集されたものです。本学で唯一、部局横断型で構成された『文部科学省 21世紀COEプログラム 心の働きの総合的研究教育拠点(平成14-18年度)』、その後継となる『日本学術振興会グローバルCOE 心が活きる教育のための国際的拠点(平成19 -23年度)』での活動や成果も、本ユニット発足の支柱となってきました。
Activity
AIやデータ科学、それを基盤としたIoTやロボット技術開発が、国の政策として強力に推し進められています。それを待たずとも、私たちが生きる環境はこれまでにないスケールで激変し続けています。他方、ヒト(Homo sapiens)は、数百万年という長い時間をかけて環境に適応しながら、いまあるような姿かたちを獲得してきた生物です。目には見えない心や行動特性も、進化の過程で身体を取り巻く環境に適応しながら獲得されてきたものです。
しかし今後、未曾有の環境と相互作用することになる私たちの身体、そして脳や心にはどのような影響が生じるのでしょうか。さらに未来に目を向けると、次世代の脳や心の創発・発達にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。いまこそ、「ヒトとは何か」という基本的理解に立ち戻り、人類の持続的発展に向けて学術が担うべき課題に向き合うこと、次世代が生きる未来環境をどのように設計していくべきかを真剣に考える責任を果たすことが必要です。
その意味で、こころの科学ユニットが果たすべき学術的、社会的役割はどんどん大きくなっているといえます。私たちは、文理という旧来敷かれてきた線引きを超え、さらに、既存の方法論や考え方を超えて、ヒトという存在の科学的理解をいっそう深め、それに基づいて未来社会のビジョンを創っていく組織でありたいと思っています。
今、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は長期化の様相を呈しています。「密・身体接触」を避ける対人コミュニケーションを基本とする生活様式が求められていますが、こうした環境で生きることは、人類にとってきわめて不自然なことです。今こそ、私たちは、コロナ禍だからこそ大事にすべきこと、それをどのように実践できるかを具体的に考え、提案する必要があります。その羅針盤となるのは、生物としてのヒトのこころの科学的理解にほかなりません。本ユニットが担う役割はきわめて大きいと思っています。